「ロシアの装丁と装画の世界」の図録
高円寺の「えほんやるすばんばんするかいしゃ」さんで今年5月〜6月に行われた展示、 「ロシアの装丁と装画の世界展」。
その際に、店主荒木さんらが作った素晴らしい図録がこちら。 当店でも扱えることになりました。うれしい!

それはそうと、ざっと「ロシアの装丁と装画の世界展」の話をさせてください。
我々もこの展示にお邪魔しました。
おそらく1000冊ほどの(もっとあったのかもしれない)ソ連時代の書籍が、
壁一面にずらーっと並んでいたり積んであったりしました。
ロシアの本というと、薄くてぺらぺらの絵本くらいしか見たことがなかったので、
ハードカバーの児童書や書籍がこんなにたくさん一堂に並んでいるのを見たのは初めて。 お店に入った瞬間、なんかすごいことになってる!という興奮に包まれました。

一冊一冊手に取ってみると、デザインがほんとうに面白い。 カクッとしてペタッとしたグラフィカルな表現が多くて、全体的にかっこいい。
表紙と見返しにギャップがあったり、挿絵が意外なタッチだったり、
印刷もいったいどういう手法なんだろう?と興味の湧くものばかり。
もちろんロシア語は読めないので、今手にしている本がどんな内容なのかは全くわからない。 なんだかわからない。けどすごくいい。
情報の無さが、「これいい!」と思う自分の物差しを浮き彫りにしていくこの感じ。
面白い体験だなあ、と思いました。 こういう体験ができる展示って、自分にとっては初めてだったように思います。

⇦ちなみにこれが我々の選んだ本。
手に取ってページをめくるまでもなく、これは買うだろうな、と思っていた数冊。 やっぱりいいなあ。絵になる。
個人的な話ですが、昔はよくCDやレコードをジャケ買いしていました。
絵本もそれに似ていて、チェコや海外の古い絵本がとても好きなのですが、所謂ジャケ買いの感覚で見ていることが多かったように思います。
自分は実はそれにどこかで罪悪感のようなものを感じていて、おはなしの部分も含めての絵本なのに、そこのところを蔑ろにしてよいのか等々、後ろめたい気持ちをどこかで抱いていました。
その後ろめたさが、この展示ではごくごく自然に解放されたように思います。
キャプションのない本、カテゴライズされていない陳列、この本はこういう本で、という説明をしない荒木さん。
そんなちょっと異常な空間で発動する、これいい!と思う気持ちとその自由さ。
自分がこの展示で感じた面白い体験って、この明るい解放感だったんだなあ、
と今になって思います。 (あくまで個人の感想です。というか、図録のあとがきにある店主荒木さんの文章をなぞるような内容になってしまいました。 きっと、いろんな人がいろんな感想を持っているんだろうな、と楽しく想像できるのもこの展示の素晴らしいところだと思います。)

前置きが長くなりましたが、
そんな素晴らしい展示が凝縮されたこの図録、これがまた素晴らしい。
図版掲載数は278点。表紙と見返しのみの構成で、キャプションもなし。 ランダムな構成が素晴らしくて、次にどんな表紙や見返しが来るのか予測不能です。
ページをめくるのが楽しくて、いつ見ても新鮮な発見があります。
ソ連時代のデザインの貴重な資料でありながら、直感的に楽しめる気楽さもある。
書籍として、素晴らしい一冊になっています。
数は少ないですが、販売始めております。
ぜひ、手に取ってご覧ください。どうぞよろしくお願いいたします!
◎えほんやるすばんばんするかいしゃのHP http://ehonyarusuban.com